710回目の告白。~好きなのに、好きになってはいけない人~
海聖が退院した次の日。
玄関を出ると、幼馴染だった頃と同じように海聖が待っていた。
「…おはよう、繭歌。今日も好きだよ」
前と同じことを言われた。
でも前と違って、今日の「好き」はとてもむず痒い。
むず痒くて下を向いていると、顔を覗き込まれた。
「…な、何よ…」
「繭歌は?繭歌は俺のこと好き?」
こいつ、私に好きって言わせようとしてる。
こんな恥ずかしい言葉、言えるわけないでしょ。
なんて前の私なら思ってたかもしれない。
もちろん、今もそう思ってるけど。
でも前とは違う。
「……す、好き…だよ…」
前は恥ずかしくて言えなかったけど、今は恥ずかしくても好きって言える。
目を合わせずに小声だけど。
それでも満足したのか、海聖はふっと笑って私の手を握った。
恋人になった海聖は一つ上手で、心臓がもたない。