《実話》Last Love〜命を懸けた愛〜
「愛美のためにも、誠人のためにも、この子のためにも、生ませてください。」

英美は弘樹に懇願した。

弘樹は硬い表情のまま、煙草に手を伸ばした。

『ふぅ〜』

弘樹の口から出る煙が、二人の視線を釘づけにする。

この煙のように癌も消えてしまえばいい。

英美も弘樹も煙を見ながら思った。

「万が一…

万が一のことがあったらどうすんねん…」

弘樹の言葉は切実な思いで、声は風にさえ負けてしまいそうなぐらい弱々しい声で呟いた。
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