《実話》Last Love〜命を懸けた愛〜
「先生、一つお尋ねしてもよろしいですか?」

「どうぞ?」

高野先生は英美を見ずに答えた。

「この子を生んでこの子にまで病気が移るってことはありますか?」

英美は生まれた子供の命の心配をしていた。

自分の命より大切な子供に遺伝しないか、それだけが心配だった。

「現段階ではなんとも申し上げられませんが、たぶん大丈夫でしょう。」

高野先生は悲しそうな、切なそうな、苦しそうな笑顔を見せて答えた。

その言葉に安堵のため息を洩らす英美。

高野先生の表情を見て苦しくなったが、何も考えないことにした。

考えるのはお腹の子だけに集中しよう。



生まれてきて病気だったら可愛そうだもの。

よかったね。

英美はお腹を擦りながら思った。
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