《実話》Last Love〜命を懸けた愛〜
「今でも奥様を?」

弘樹の表情を見ていると自然に、口から出た言葉だった。

英美の問いに弘樹は何も言わないが、違うことを話始めた。

「俺には二人の女と男の子供がおる。

だけど、離婚の時に長女のほうは母親が連れて行った。

それ以来、長女には会えてない。」

弘樹の過去を聞き、英美は何も言葉にできないでいた。

ただ、日が傾き始めた海を、見てるしかできなかった。

二人を包む波の音は全く変わらず、潮の香りさえ変わらない。

二人はただ、黙ってオレンジ色に輝く海を眺めていた。
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