《実話》Last Love〜命を懸けた愛〜
「お連れ様が、ご到着されました。」

「どうぞ。」

仲居さんの言葉に、中から乾いた冷たい声が返ってきた。

「失礼します。」

その言葉と同時に襖は開けられた。

弘樹が先に入り、英美は入り口で軽く頭を下げ、足を踏み入れる。

座布団を退け、正座をする英美。

三つ指をつき深々と頭を下げる。

「この間は大変失礼しました。」



頭を下げたまま時間だけが流れる。

時間としては然程流れてはないが、英美には、一時間以上に感じるぐらい長い、長い時間。

じんわりと、額から汗が滲み出した。
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