つま先立ち不要性理論
でも。一緒に過ごすうちにだんだんと、わかってきてしまった。
「結局あの人はさ、本気でわたしのこと愛してたわけじゃな……」
ジュワーーーーーーー
程よく熱せられた金網に敦史は続けてタン塩第二陣を投入。肉が焼ける凄まじい音とスモークにわたしの声はものの見事に掻き消された。
「ちょっと! 今大事な話してる!」
「だってはやく皿あけねぇと次来るだろー? つーかお前まだ食ってねぇの? 冷めても知らねーぞー」
ふとテーブルに目を落とせば、わたしの取り皿に美味しそうに焼き目のついたタン塩たちが積み上がっていた。こんにゃろう、と心の中で悪態をつきながら、ひとまず自分の肉を片付けることにする。
「……うまい」
「おー、そうかうまいか。今日は俺の奢りだからほどほどにしとけよ」
「敦史のくせにケチケチすんなよ」
「お前で節約して今度かわいい子となんかいいもん食べに行く」
……むっかつく。こいつの財布の中身からっぽにしてやる。