つま先立ち不要性理論
「どいつも同じだよ。みーんな自分のことがいちばん好き。だから自分が好きになったやつには自分のことも好きになってもらいたいの。自分大好き人間同士、適当なとこで折り合いつけていくしかねぇよ、こればっかりは」
理想はどこまでも理想でしかなくて、現実はもっと手厳しい。相手のすべてを好きになることなんてできないから、自分なりに折り合いをつける。
恋愛なんてきっと、神経質になって几帳面にするものじゃない。
そんなことしてたら、肩が凝る。
「敦史さんはさー、どんな女が理想?」
「乳がでかけりゃ誰でも」
「……」
「っていうのは冗談で……あっ!」
無性に腹が立ったので、やつがずっと目をかけていたこんがり食べ頃な丸腸をむんずと箸で横取りしてやった。
ひどいだの鬼だのぶつぶつ文句をたれながら、敦史はまた金網の上に新しい肉を転がし始める。
「……理想っていう理想は特にないけど。一緒にいて楽なやつがいい。変に気を遣わなくていいような」
「わたしみたいな?」
「そーそー。お前みたいな」