つま先立ち不要性理論
「……じゃあたとえば、わたしがあんたに今告白するとしたら、二つ返事で付き合ってくれるわけ?」
「いいよって言ったらどーすんの」
「その返しはずるい」
「お前が先に聞いてきたんだろー」
顔を見合わせて、ふはは、とふたりで笑い合う。素直に楽しいと思える時間。自分がいちばん、自分らしくいられる時間。
うん。もしかしたらわたしもアリかもしれない。まだわからないけれど。理想の男には程遠くて、無条件にいちばん近くにいてくれて。
理想を語ればキリがない。
現実を嘆けば虚しいだけ。
それでも昨日よりもほんの少しだけ心の中の鬱が晴れて、ほんの少しだけ身体が軽くなった心地がするのは。
つま先立ちのやめ方がほんの少しだけ、
わかったような気がするから。
『つま先立ち不要性理論』
-END-