(仮)



脱衣所のクローゼットの中にかけてあった自分の服(おそらく)に着替え、脱衣所を出ると、部屋中美味しそうな匂いで満たされていた。



「出たか。どうだ?うまそうだろ?飲み物持ってくから座って待ってろ」



男に言われた通りにテーブルに歩み寄ると、…なんだ……この豪華な食事は…。


テーブルの上に並ぶ豪華な料理の数々に、開いた口が塞がらず立ち尽くしてしまった。



「なーに突っ立ってんだ?立ち食いでもすんのか?」



笑いながらコトン、とマグカップを二つテーブルに置く。



「ほら座れ」



椅子を引かれ、ハッとして腰を下ろす。



「おいおい驚きすぎだろ」



男は可笑しそうに私を見て笑う。


だ…だって…



「す、すごいんだもん…。こんなご馳走…」


初めて…?



「すげぇだろ?テーブルに乗る限り腕によりかけて作ったんだ、うめぇぞ!さぁ食おうぜ」



男に促され、どれに手を付けようか迷いながらも恐る恐る料理を口に運ぶ。


「…お…おいしい…!」


本当においしい…!!


「プッ。昨日とおんなじじゃねーか!」


男はまた楽しそうに私を見て笑う。


「また泣くなよー?」


「なっ…!な、泣かないもん!」



昨日の自分を思い出すと泣いてばっかりで恥ずかしくなり、耳まで赤くなってしまった。


その恥ずかしさを紛らわすように、勢いに任せ手当たり次第豪華な品々に手を付けた。


うーん…

どれもこれも全部すっごくおいしい…!!


私は幸せな気分に浸りながらひたすら食べた。



男が微笑みながら私を眺めていることにも気づかないぐらいに。






< 10 / 10 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop