(仮)
…………。
……なんか…いいにおいがする……。
さっきまでの頭を撫でる温もりは…もう感じない。
夢だったのだろうか……。
無意識にそんなことを思いながら重たい瞼を持ち上げる。
ぼんやりとした視界に映るのは、木で組み立てられた天井。
……?
一体どこなんだろう、ここは…。
「おう。目、覚めたか」
え?
突然聞こえた声に身体がビクッと反応し、その声の主を探そうと首を傾ける。
「へぇ…黒い髪に黒い瞳か。珍しいな」
誰?
声の主は、褐色の肌に赤い髪と赤い瞳を持つ若い男だった。
吊り上がり、力の篭った鋭い瞳は少し私の身体を強張らせる。
「なんだ。俺が怖いのか? …あながち間違っちゃいねぇか。何度理性が飛びそうになったことか…」
男はため息をつきながらブツブツ言っている。
何?なんのことなの?
「…そうだ。お前腹減ってるだろ?ちょっと待ってろ」
男はそう言うと、私に背を向けキッチンらしき所へ向かった。