(仮)
「……っ…、う…っ」
自分が泣いていることに気づくと、なんだか止まらなくなってきた。
涙は流れっぱなしで、肩を使ってまでしゃくりあげる。
……どうして……
一体何が悲しくて私は泣いてるの…?
自分でも意味がわからない…
それに、こんな初めて会う男の人の前で泣くなんて……
男は黙って私を見ていたかと思うと、椅子から立ち上がりどこかへ消えた。
かと思うとすぐに戻ってきて、いまだにしゃくりあげる私の顔にタオルを当てた。
「ひ…っく…、う…?」
涙でぐしゃぐしゃの顔で男を見ると、男は真剣な表情で私を見つめていた。
「泣きたい時は泣けばいい。何があったかは聞かねぇが、タオルが水浸しになるぐらい泣け。そしたら絞ってやるからよ」
そんなことを言いながら私の頭を撫でる。
この温かさ……
やっぱりさっきのは夢じゃなかったんだ。
この人…だったんだ…。
私はその手の温もり、優しさを感じながら、何が悲しいのかわからず泣き続けた。
その間男はずっと側で私の頭を撫でてくれていた。