塩素と君。
この謎の言葉でもやもやしていた午前中は、
説明が全く入ってこなかった。

休み時間がきても、しゃべっていてもやっぱり
気になるのは言葉の事。

「さっきからずっと物思いにふけってるね。
 まさか、生徒指導が怖いとか。」

高校に入って、新しく出来た友達の、唐沢皐月が
話しかけてくる。
うちの学校の席順は特殊で、入学試験の時の点数の順に並んでいる。
トップから、とかじゃなくて、本当にばらばら。
歴史の点数がよかったもの、とか、ビリから、とか。
その順番は生徒には知らされない。
いじめの標的とかにされちゃうのかな。

皐月とは席が近かった。
皐月が前で、珠卵花が後ろ。

最初は、ただのお嬢様かと思っていたが、実際は
妄想女子で、女の子らしいものが大好きな、
元桜花中の女の子だった。

「違う。違うよ。
 あのね、水泳部の、人間の原点っていうのが
 全然わからなくて…。」

まだ着なれない制服の裾を伸ばして言った。
どうやら、皐月にもこのもやもやを分けてしまったようだ。
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