however close to you
* * *
あーあ。汐莉さんが、昼ドラに出てくる姑くらい、意地が悪かったなら。
あんな性悪女よりあたしの方が何倍もいいわっ、と開き直れたのにな。
…さすがにこれはキャラ的に無理があるか。
でも、もし本当にそうだったなら、爽さんを好きでいることにこんなに罪悪感を抱かなかったかもしれないのに。
「なっちゃん、ポッキー食べる?」
前の座席から身を乗り出した汐莉さんが、白くて細い指でポッキーの袋を差し出してくれている。
「わーい、いただきます」
汐莉さんは本当に可愛い。爽さんが好きになるのも無理はない。あたしが男だったら、絶対惚れてる。
さっきまであんなことを考えていたせいか、ミルクチョコレート味のはずのポッキーが、苦く感じた。