however close to you
「汐莉たーん、バスの運転中に動いちゃいけないんでちゅよー」
いつものごとく、ふざけた爽さんが茶々を入れた。
汐莉さんの隣の席は、もちろん爽さんだ。
「なにそれー。小学生扱い?」
少しふくれた汐莉さんが、身を乗り出したまま後ろを振り返った。
小さな耳たぶに光るピアスは、爽さんとお揃いだ。
「違いまちゅー。ちびっこしおちゃんは幼稚園児でちゅー」
「…爽、本気で気持ち悪いよ」
「しおー、なんてこと言うんだよー。……棗!」
爽さんまでもが、後ろに身を乗り出してきた。
「おまえの毒舌が汐莉に移っちゃったじゃねーか!」
「あたしのせいですか?爽さんが気持ち悪いからいけないんですよっ」
「気持ち悪いってまた言われたよー」と泣き真似をしながら、汐莉さんに抱きつこうとして、断られる爽さん。
爽さんは、知らない。
あたしの毒舌は、あたしの防御だ。