however close to you
だけど、それはあたしの甘い勘違いだったのかもしれない。ありふれた悩みや困難が、ふたりの間にあったとしても何の不思議もないはずなのに。
いくら仲良しに見えていたって、本当のところは当人にしか分からない。
「聞きますよ、…あたしでよければ、ですけど」
聞きたいような。聞きたくないような。
「おまえ、恋愛経験乏しそうだかんなー。相談しても意味なさそう」
「ううわっ、ひどいっ。人が親切に言ってあげてるのに!」
「俺の心配してる暇あんなら自分の心配しろー。ぼけっとしてるとあっという間に大学生活終わるぞー」
「ほっといてくださいー!」
あれ、いつも通り。
なんだったんだ、さっきの珍しく落ちたような様子は。
夕焼けにほだされて、センチメンタルになっていただけ?
「海の家まで競走すんぞ!よーいドン!」
「はっ?ちょっと、いきなり?ずるいー!」
突然走り出した爽さんを焦って追いかける。
普段の爽さんに戻った。よかった、よかったはず、でも少し引っかかる。
ひとひらの靄々が、胸に残った。