however close to you

「しーおー」


爽さんはうらめしそうな顔でにらんだ振りをすると、汐莉さんのお皿から茄子の天ぷらをつまんで、ひょいと半分を一気に食べてしまった。


「あ、汐莉さんの!」

「いーの。こいつ茄子嫌いだもん」


汐莉さんの方へ目をやると、にこにこと恥ずかしそうに幸せな顔をしている。

ああ、なんだか力が抜ける。


「なんかね、食感?あの、ふにゃんくしゅっ。って感じがダメなの」

「そう、なんですか。知らなかった」


あたしの座っている椅子の底が抜けて、がたがたと崩れ落ちてゆく。

長く付き合っていれば、何度も食事を共にしていれば、相手の好みを把握しているのも当然なんだ。

嫌いだと分かっているなら、嫌いではない方が食べてあげるのも当然。それをいちいち訊かないのも当然。
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