however close to you
爽さん…。
「いや、ちょっと潮の匂いをかぎたいなー、なんて」
「なんだそりゃ」
爽さんは「よっこらせ」と隣に腰を下ろした。
いつもなら「オッサン臭いですね」とでもつっこむところだが、そんな気分ではなかった。
「なんか元気なくないか?」
「…気のせいですよ」
なんで、こんなときに優しくするの。もう、好きになるのやめようと思ったのに。
本当に、タイミングよすぎて、間の悪い人だ。
「聞いてやるから、言ってみ?」
「…いいです。なんでもないです」
爽さんは、あたしが爽さんのこと好きで、それで悩んでるんだってこと、微塵も思ってないんだろうな。
だから話してみろだなんて言えるんだ。
言えるわけない。
言ったら終わってしまう、なにもかも。