however close to you
「おまえなー、そんな暗い顔してなんでもないって言ったって、はいそうですかーって終われるはずないだろ。余計気になるじゃんか」
「気にしなければいいじゃないですか」
「心配だっつってんの。棗が元気ないと調子狂う」
心配なんて。してほしいけれど、してほしくない。
その言葉ひとつでこんなに乱されてしまうから。
言ってしまおうか、いっそ。
終わらせてしまおうか。
どうせ合宿が終われば会う機会も減るんだし。例え気まずくなったとしても、それはそれで吹っ切ることができるかもしれない。
このしぶとい想いを断ち切るには、それしかないのかもしれない。
「…そ」
「棗が言わないなら、俺が言うぞ」
「え?」
口を開きかけたところで、爽さんに遮られた。
でも、「俺が言う」って、どういうこと?
隣に座っていた爽さんが、真正面へと移動した。向き合う格好になる。
彼方で聞こえるカモメの声が、なにか、大きなことがやってくる予感を煽る。