however close to you

「おまえなー、そんな暗い顔してなんでもないって言ったって、はいそうですかーって終われるはずないだろ。余計気になるじゃんか」

「気にしなければいいじゃないですか」

「心配だっつってんの。棗が元気ないと調子狂う」


心配なんて。してほしいけれど、してほしくない。

その言葉ひとつでこんなに乱されてしまうから。


言ってしまおうか、いっそ。

終わらせてしまおうか。

どうせ合宿が終われば会う機会も減るんだし。例え気まずくなったとしても、それはそれで吹っ切ることができるかもしれない。

このしぶとい想いを断ち切るには、それしかないのかもしれない。



「…そ」

「棗が言わないなら、俺が言うぞ」

「え?」


口を開きかけたところで、爽さんに遮られた。

でも、「俺が言う」って、どういうこと?


隣に座っていた爽さんが、真正面へと移動した。向き合う格好になる。

彼方で聞こえるカモメの声が、なにか、大きなことがやってくる予感を煽る。
< 29 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop