however close to you
「爽さーん」
呼び掛けに、金髪と黒髪の混ざった癖っ毛の頭が振り返った。
「お、棗。来てたんか」
「今来たとこです。爽さんがあたしに会いたいかと思って」
「はー?もういっぺん言ってみろっ」
隣に腰掛けたあたしの髪を、爽さんはわしゃわしゃと乱した。
同時にくしゃっと変わる、その笑顔が憎い。
「もー、素敵なボブが台無しじゃないですかっ」
「勝手に言ってろ」
爽さんは、サークルの先輩だ。あたしたちの所属するテニスサークル、アフターグロウは、たいていいつもB棟の食堂に集う。
座る場所もなんとなく決まっていて、奥の自販機の前一帯がアフターグロウの定位置だ。
今いるのは、爽さんとあたしの他に数人。
サークルの人数は三十人にのぼるため、よく話す人話さない人の差はどうしてもついてしまう。