however close to you

「汐莉ー、毒舌女王棗様がいじめてくるよー」

「なっちゃん、今日の飲み会行く?」

「無視かい」

「もちろん行きます!汐莉さんも行きますよね?」

「しおしおー」

「うん、行くよ。この前はバイトで行けなかったし」

「しおたーん」


二人ともわざとやっているんだけれど、爽さんがあまりに捨てられた子犬のような目をするから、同時に吹き出してしまった。


「はいはい、ごめんね?」


両手をだらっと伸ばしテーブルに顎をつけて不貞腐れる爽さんの頭を、小さな手がぽんぽんと撫でた。


「チューしてくんなきゃ許さねー」

「じゃあいいよ、許さなくて」

「おい」


爽さんと汐莉さんは、もう二年も付き合っていて、本当に仲がいい。お互いがちゃんとお互いを好きだと傍目にも分かりすぎるくらい分かる。

そんな恋人同士のやりとりは、あたしにとっては棘になってしまう。
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