however close to you

* * *


そんな筈ないでしょう、なにかきっかけがあるに決まってる、決定打ってなんだったの。

みんなそう言う。

でも、本当にないのだ。きっかけも、決定打も。

抜き足、差し足、忍び足。そうやってじわじわと夏がやって来たみたいに、いや、それよりも遥かに自然に。

あたしが爽さんを好きなのは、そりゃもう生まれたときから決まっていたように、気がついたらそこにあった。


分かりやすい原因があれば、まだよかった。好きになりそうだ、と思った瞬間にセーブすればいい。

あたしはあたしを二十年近くもやってきたんだ、本気になれば好きになってはいけない人を好きにならないなんて、簡単なコントロール。


どっぷり嵌まってから気づいたんだもん、もうどうしようもない。


世界が夜のままになってしまうのと、あたしの想いが叶うこと、どちらがありえないのだろう。


だって、爽さんは言ったのだ。
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