however close to you
* * *
まだあたしが一年生だった頃。
「なっつめちゃんはー、いっつも爽の横にいるよねー?」
“なつめ”が“にゃちゅみぇ”にも聞こえるくらい、べろべろに泥酔した青木先輩が絡んできた。
月一恒例のサークル飲みも、始まってから二時間が経ち、あちこちで出来上がった人々の姿が見える。
「そうですか? というか、先輩飲みすぎですー」
「青木先輩、ほら水」
隣に座っていた爽さんも、絡まれたあたしをフォローしてくれようとしている。
「飲んでないよーん。酔っぱらってないよーん」
しかし、青木先輩は爽さんの差し出した水を払い除けると、さらにそこらへんにあった誰のものか分からないジョッキを煽った。
「でさー、なんで棗ちゃんは爽の横にいるわけー?」
なんで、と言われても。
特に席が決まっている訳ではないから、自然と仲が良い人同士が近くなってしまう。ただそれだけだ。
「あ、わかったー。爽のこと好きなんでしょー?」
身体の中心を射抜かれたようだった。
なんと言い訳をしたらいいか分からず、黙ってしまった。沈黙は肯定と同じ意味を持つ。しかしこのときのあたしには、上手くかわす術が備わっていなかったのだ。