三行ラブレター
「これ返却ね」
「はい」
本を読みふけっていた私に届いた声は高いアルト声。
そして、何度も聞いている声だった。
顔を上げるとそこには担任の日向がいた。
驚く私に「何?教師が本借りちゃいけないわけ?」とムスッとする。
「いや、別にそんな事は…」
ないです、けど…なんてしどろもどろに言えばため息をつかれた。
「今日当番じゃないみたいだけど」
「まぁ、そうですね」
名前的には。
壁にかかっているボードは明らかに私の名前とは異なった。
それに気づいていた日向はため息を吐いた。
こ、こわっ。
先輩にお願いされれば断れる筈もなく、ネームプレートには"鈴木杏"と書かれている。
私の気持ちも察して欲しい!
返却手続きの終わった本を下げようとすれば、ふと日向の声が聞こえ顔を再び上げた。