三行ラブレター



「これ返却ね」

「はい」


本を読みふけっていた私に届いた声は高いアルト声。
そして、何度も聞いている声だった。

顔を上げるとそこには担任の日向がいた。



驚く私に「何?教師が本借りちゃいけないわけ?」とムスッとする。


「いや、別にそんな事は…」

ないです、けど…なんてしどろもどろに言えばため息をつかれた。



「今日当番じゃないみたいだけど」

「まぁ、そうですね」

名前的には。

壁にかかっているボードは明らかに私の名前とは異なった。
それに気づいていた日向はため息を吐いた。

こ、こわっ。



先輩にお願いされれば断れる筈もなく、ネームプレートには"鈴木杏"と書かれている。
私の気持ちも察して欲しい!


返却手続きの終わった本を下げようとすれば、ふと日向の声が聞こえ顔を再び上げた。

< 11 / 55 >

この作品をシェア

pagetop