三行ラブレター


まだ慣れない"日向"と言う表札。

高校3年間は氷室で通すつもりだが進学、就職したら私は日向となる。

日向、夏樹。
これが、私の未来の名前…。


表札を見つめ笑みを浮かべれば、今はいない父と母を思い出した。
新婚旅行、楽しんでるかな。

結婚式は挙げずに新婚旅行で海外へと行った両親。
家には私と日向だけ。

2人の声が聞こえないのは寂しいものもあるが、2人には幸せになって貰いたい。


夕飯の用意をしていれば鍵の音が聞こえ、扉が開いた。





「ただいま。今日はカレー?」

「おかえりなさい。ううん、カレーうどん」

「カレーうどんね。久しぶりかも」


予想はあながち間違いではないものの外れた日向は目を細めてマフラーを外す。

キッチンの隣にある日向の部屋は黒をベースにしたシンプルな部屋だった。
共に暮らすようになって1週間と言う月日が流れたがいまだに"棗"と呼んだ事がない。

いや、本来"お兄ちゃん"か。


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