三行ラブレター


「抜け出す必要なんてないんじゃないか?幸せだと思うんだったら
それを貫き通せばいいと思う。俺は」

「…綾瀬が良い事言ってる」

「綾瀬って言うな!つーか、すっげー恥ずかしい!」


わぁぁと雄たけびを上げる綾瀬を近所のおばさんは怪しい目で見ていた。
こう言う所があるからきっとバカにされるんだな、生徒に。

でも、私は。


「私、綾瀬センセの優しい所、好きです」

「…っ、す、す、…?!」

「じゃ、こっちなんで。さよなら」


慌てふためく綾瀬にいたずらな笑みを浮かべて手を振れば
綾瀬は遅いながらも「おお、気をつけて帰れよ!」と言って手を挙げる。


大切なものだからこそ、失うのが怖い。

また私を生んだ母のように離れて行くのではないのだろうか。
そう考えると胸が痛んだ。

でも、綾瀬の言葉で考えを改める。



―掴んだ幸せは、絶対離さないようにしよう。

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