三行ラブレター
日向先生(side日向)
あの日交わした約束なんて、ずっと昔に置いてきた。
今僕の中にあるのは、あの頃のアイツじゃない。
決して、違う。
―だから誤解しないでよ。
教師と生徒の前に僕らは兄妹なのに
何を想ってるんだろう。
家の前に1人の女の影があった。
夏樹ではない。夜7時を過ぎた時間だろうか。
その女を見ながら家の前まで行くと、俯いていた女は顔を上げ僕に気づいた。
そして紅い唇を動かし、僕の名前を紡いだ。
「棗…」
目の前に現れたのは昔付き合っていた彼女だった。
際立った顔立ちで男の好意を受け続けていたアイツは僕に告白してきた。
顔も性格も悪くない。
さばさばしていて、
いつも笑顔で、僕のマシンガントークも
受け止めるぐらい陽気な女で。
よく中学から仲が良く、偶然にも僕と同じ学校で勤める事になった柳田に「棗には勿体ねぇよ」なんて言われて。
そんな事言われなくても分かってはいたが、それを認め事が出来なかった。