三行ラブレター
「縁り戻す気はない」
「…っ、彼女居るの?!」
「いないよ。別れてからずっと、ね」
「なら…!」
彼女はいない。
でもその代わりに守りたいものが出来た。
守ってやらなきゃいけない奴があらわれた。
「守りたい奴がいるんだ」
「…っ棗!!」
「…っ!!」
突然顔を上げたかと想えば唇に何かが触れた。
目の前にはあいつの顔が見えて、以前の記憶が呼び覚まされる。
捨てた記憶に縋りつく気持ちなんて何処にもない。
甘い記憶を抱きしめる、そんな愛情なんて、もう何処にも―
「…っ、」
思い切り突き飛ばせば物音がした。
横を見ると呆然と立ち尽くす夏樹の姿があった。
見られた、―そう想った矢先の事だった。