三行ラブレター


「何たそがれてんだよ」
「…綾瀬先生かぁ」
「綾瀬先生ですよ」


棒読みで返してくる綾瀬から空へと視線を向けた。

この人こそこんな所で何してるのだろうか。
人気のない校舎のわきには花壇がある。
来年からは園芸部も悪くないな、と思っていた。


「花を見てると、気分が落ち着くんです」

「落ち着く?…何かあったか?」


担任でもないのにどうして気にかけてくれるのだろうか。
そんな事を思いながら綾瀬へ視線を向ければ、指先で花びらに触れる姿が見えた。


「テスト勉強しようにも捗らなくて」と呟けば「頭悪そうだもんな」と言われてしまう。
ちぃちゃんに続き綾瀬まで!酷い!



「先生は国語以外に得意な科目は?」
「…体育か?」
「体育は省いて!私数学苦手なんですよね。ちんぷんかんぷんで」



俺もーと項垂れる綾瀬に教えて貰おうと言う期待は途切れた。
そんな時だった。


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