三行ラブレター
厚手のトレーナーは綾瀬のものなのか座っている私が持てば引きずってしまいそうなほど大きくて。
ズボンも貸して貰ったがそれも長くて体に合いそうにない。
「早く着替えて来いよ」
顔を紅くして言う綾瀬に「有難う御座います」とお礼をいい
私は指示された一室へと向かった。
どうやら綾瀬の部屋らしく必要最低限の家具しかない。
良い教師になるには、なんていう本まであり、書道の本もあった。
そこには綾瀬の全てがある気がして、
着替え終わってもじっと見入ってしまった。
「着替えたか?」
「あ、はい!」
慌てて制服を手に取り部屋から出れば「日向先生に連絡しといたから」と言う。
「何からなにまですみません」
「いや、別に大したことは」
少し照れたように言う綾瀬に小さく笑うとザー、と先ほどよりも激しい雨音が響いた。
窓の方へ近寄れば雨はベランダまで入ってきている。
あのまま走って帰っていたらどうなっていたのだろうか。
綾瀬と帰りが一緒で本当に良かった。
安堵していると後ろにいた綾瀬は窓の景色を見つめながら「すげー雨」と呟いた。