72年目のキス
キス
10月14日の朝、ベットの中で目覚めた。
横になったまま、ドアの方を何気なく見つめる。 

ドアが開く。 疲れきった母の顔。 じっと見ていると、まだ横になったままの私の側までやってきた。

とても優しい笑顔で、私の右のほっぺたにそっとキス。そして母はスッと消えた。 

はっ?! 何? 今の?

今日は日雇いの仕事に行かなければならない。 夜11時くらいに終わるから、それから実家に電話してみよう。 

昨日、電話で予約して、昼は、倉庫で荷物の搬入の仕事。 夜は居酒屋で仕事。 

家賃は3ヶ月滞納。 金がない。 半年前に勤めていた会社を辞めた。  平凡なサラリーマンなんてつまんない。 私はもっとできる。 そこら辺の奴とは違う。。 リッチになるぜ!! 勢いで辞めたものの、貯金はほとんどなく やってみたいことをやってみた。 かっこよく言えば、今 流行の独立。 でもすぐ挫折。 ついに手持ちの金は100円になった。 家の中をかき集めると1320円になった。

あ~情けない。 こんなはずじゃない。 もっとできるはず。 ほかに自分に合う仕事があるはず。

 いろいろ考える前に、とにかく働かなきゃ。夢見る前に、飯食わないと。でも俺。なにもできないな。 これと言って 誇れるものもない。 せっかく大学まで出してもらったのに、。 一体 何してんだ 俺。

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