レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「テレンスとは、もう結婚して二十年近くになりますか。私が駆け出しの売れない女優だった頃からですもの」
「……一言も言ってなかった」
年増だとか何だとか、テレンス・ヴェイリーの前でひどいことを言ったような気がしなくもない。何もなかったことにしようと、エリザベスは決めた。
「公にはしていないので知っている人は少ないでしょうね。私のイメージというものがありますものね」
「イメージ?」
もう一度ミニーは笑い声をあげる。その様子は、エリザベスを戸惑わせた。
「そう、女優ミニー・フライのイメージ。妖艶で、男を惑わせて、若いツバメを連れ歩く悪女。なかなかうまくやっているでしょう?」
ミニーが首をかしげると、耳につけた大きなサファイヤのイヤリングが煌めいた。
「何で女優をやめないの?」
ちょうど広間に通じる扉の前に立った時、エリザベスはその問いを投げかける。
「……いろいろと都合がいいからですわ」
今度の笑いは、くすりという小さなものだった。扉に手をかけたミニーは、エリザベスをふり返る。
「後ほど主人の書斎にご案内しますわ。それまではどうぞ楽しんでいらして……ダスティ・グレンがお好きだとか?」
「好きじゃない女の子がいたら、会ってみたいものだわ」
そう返すのと同時に、ミニーは扉を大きく開いた。
「……一言も言ってなかった」
年増だとか何だとか、テレンス・ヴェイリーの前でひどいことを言ったような気がしなくもない。何もなかったことにしようと、エリザベスは決めた。
「公にはしていないので知っている人は少ないでしょうね。私のイメージというものがありますものね」
「イメージ?」
もう一度ミニーは笑い声をあげる。その様子は、エリザベスを戸惑わせた。
「そう、女優ミニー・フライのイメージ。妖艶で、男を惑わせて、若いツバメを連れ歩く悪女。なかなかうまくやっているでしょう?」
ミニーが首をかしげると、耳につけた大きなサファイヤのイヤリングが煌めいた。
「何で女優をやめないの?」
ちょうど広間に通じる扉の前に立った時、エリザベスはその問いを投げかける。
「……いろいろと都合がいいからですわ」
今度の笑いは、くすりという小さなものだった。扉に手をかけたミニーは、エリザベスをふり返る。
「後ほど主人の書斎にご案内しますわ。それまではどうぞ楽しんでいらして……ダスティ・グレンがお好きだとか?」
「好きじゃない女の子がいたら、会ってみたいものだわ」
そう返すのと同時に、ミニーは扉を大きく開いた。