レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
若い人は秘密が好き
エリザベスの情報収集の仕方はともかくとして、今問題にしなければならないのは聖骨の方だ。エリザベスは話を戻した。

「聖骨が教会や骨董品店から盗まれたのならわかるのよ。ここに聖骨ありますって宣伝しているようなものでしょう? でも、一般に広めていない場所からも盗まれていたのが気になって」

 エリザベス自身がそうだった。懐中時計を持ち帰ってはきたけれど、そこに聖骨がはめこまれているなんて宣伝したことは一度もない。時計の存在は、パーカーやマギーといったエリザベスのごくごく身近にいる人間だって知らなかったはず
 エリザベスはそっとため息をついた――本当は大切に持っておくべきだったのかもしれない。

 自分の手元に置いておけば、封じなければならない気持ちを封じることができないと――そう思ってしまいそうで。
 でも捨て去ることもできず、結局屋根裏部屋にしまい込むことしかできなかった。幸せだった少女時代の思い出と、あの頃の初恋と。
自分の手元に置いておけば盗まれることにはならなかったかもしれない。

「私の懐中時計もそう。部屋に置いておく理由もなかったから、屋根裏部屋にほうりこんでおいたの。彫刻と一緒にね」
 そう、ヴェイリーにはそう説明しておく。本当の理由を明かす気にはなれなかったから。
 彼はしかめっ面になった。
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