レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
レディ・メアリのお茶会再び
 翌朝マギーにたたき起こされるまで、エリザベスは夢も見ずに眠った。
「リズお嬢さん、そろそろお目覚めのお時間ですよ」
「パーカーは?」
「パーカーさんでしたら、いつも通りです」
 茶色のスカートに白のブラウスを合わせて食堂へ降りていくと、少し腫れぼったい目をしたパーカーがテーブルの支度を終えたところだった。

「眠らなかったの?」
「いえ、少し寝かせていただきました」
「今日は昼食は外で食べるわ。朝食の片づけを終えたら、夕方まで好きにしていていいわ。あなたは、もう少し寝た方がよさそうよ」
 食堂で『デイリー・ゴシップ』を広げたエリザベスは、目を見張った。また、盗難の記事だ。盗まれた物は、先祖代々の骨董品。こちらもまた聖骨関連の品が盗まれているらしい。

「ヘザー警部から連絡は?」
「ございません」
 言葉少なく、パーカーが返す。紅茶のカップにミルクと蜂蜜を追加して、エリザベスは考え込む。
 何もわからないから、連絡の寄こしようがないのだろう。犯人が見つかったというのなら、喜び勇んだ報告が届くはずだ。

 ――そんなことより、時計を取り戻したいんだけどな。
 考え込んでいる彼女の前に、焼き立てのトーストが置かれた。
「お嬢様、レディ・メアリからご連絡がございました。今日の昼食を一緒に――とのことです。迎えの車をよこすから、と」
「今日は忙しいのよ――」
 たった今、昼食は外で食べると言ったことも忘れてエリザベスは忙しいふりをしようとした。

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