レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「本日のスケジュールは確認済みでございます。レディ・メアリのお誘いをお断りすることはできませんよ」
パーカーの声音が危険な色を帯びる。絶望的なうめき声をあげて、エリザベスはテーブルの上に突っ伏した。
レディ・メアリは嫌いではない。
親戚として当然の愛情も当然持っている。ただ、彼女と会うのは非常に気が重いのだ。
結婚、だのレディとしてのたしなみ、だのを持ち出されたくなければ、必要以上にきっちりとしておかなければならないから。
とはいえ、叔母の誘いを断るわけにもいかない。
最初の予定では、午前中のうちに仕事を片付けて、昼食後は自由に過ごすつもりだったのだ。けれど、
マクマリー商会はパーカーやマギーにも手伝わせてはいるが、あくまでも手伝いだけだ。他に従業員はおらず、エリザベス一人でまかなっている。
アンドレアス商会のように外部に委託しているから何とかエリザベスだけでもやっていられるのだ。
昼食の少し前まで仕事を進めると、エリザベスは後の指示をパーカーに出して着替えのために自分の部屋に入った。
鮮やかな空色のワンピースと揃いのジャケットを選んで袖を通す。小さな帽子をそれに合わせて、レースの手袋をはめた。
飾りボタンのついた黒い靴とハンドバッグを持ち、エリザベスはしなやかな動作で階段を下りる。
「では、行ってくるわね」
マギーに右手を振っておいて、正面扉から外に出る。そこには、レディ・メアリの回した車が待っていた。
「まあ……あなただったの! うれしいわ、リチャード」
「レディ・メアリからのお誘いでね。急だったから少しびっくりしたよ」
車の横では、リチャード・アディンセルがエリザベスを待っていた。本来ならば運転手の役割なのだが、後部座席の扉を開いて、エリザベスが乗り込むのに手を貸してくれる。
パーカーの声音が危険な色を帯びる。絶望的なうめき声をあげて、エリザベスはテーブルの上に突っ伏した。
レディ・メアリは嫌いではない。
親戚として当然の愛情も当然持っている。ただ、彼女と会うのは非常に気が重いのだ。
結婚、だのレディとしてのたしなみ、だのを持ち出されたくなければ、必要以上にきっちりとしておかなければならないから。
とはいえ、叔母の誘いを断るわけにもいかない。
最初の予定では、午前中のうちに仕事を片付けて、昼食後は自由に過ごすつもりだったのだ。けれど、
マクマリー商会はパーカーやマギーにも手伝わせてはいるが、あくまでも手伝いだけだ。他に従業員はおらず、エリザベス一人でまかなっている。
アンドレアス商会のように外部に委託しているから何とかエリザベスだけでもやっていられるのだ。
昼食の少し前まで仕事を進めると、エリザベスは後の指示をパーカーに出して着替えのために自分の部屋に入った。
鮮やかな空色のワンピースと揃いのジャケットを選んで袖を通す。小さな帽子をそれに合わせて、レースの手袋をはめた。
飾りボタンのついた黒い靴とハンドバッグを持ち、エリザベスはしなやかな動作で階段を下りる。
「では、行ってくるわね」
マギーに右手を振っておいて、正面扉から外に出る。そこには、レディ・メアリの回した車が待っていた。
「まあ……あなただったの! うれしいわ、リチャード」
「レディ・メアリからのお誘いでね。急だったから少しびっくりしたよ」
車の横では、リチャード・アディンセルがエリザベスを待っていた。本来ならば運転手の役割なのだが、後部座席の扉を開いて、エリザベスが乗り込むのに手を貸してくれる。