レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 エリザベスが自分の席に落ち着くのを待って、彼は反対側の扉から乗り込んできた。
「私も急に誘われたの。叔母様、何を思いついたのかしらね」
「君が誘ってくれればよかったのに」
「女性から誘わせるのはどうかと思うの。あなたの方から誘ってくれればよかったのに」
 目をくるくるとさせて、エリザベスは悪戯めいた笑みをリチャードに投げかける。

 照れたように、わずかに頬を紅潮させて彼は顔をそらした。
「この間会った時も忙しそうだったし、連絡しにくくて」
「あなたは大事な友達よ。友達のために使う時間ならどんなに忙しくても作れないことはないのよ」
「そう――それなら、今度」

 リチャードが思案顔になる。どこに行こうか考えてくれているのだろう。
「今度なんてだめ。思いついた時に決めないと……そうだわ。ミニー・フライの舞台を見に行きましょうよ。『亡国の王女』を昨夜見たけれど、すっごくよかったの。叔母様も一緒に、ね」
 リチャードと正式に婚約した後ならともかく、劇場に二人きりで行くというのは後々問題になりかねない。

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