レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 レディ・メアリの都合も聞かずに勝手に付添人に決めた時には、車はレディ・メアリの屋敷に到着していた。
「エリザベス、今日の服はよく似合っているわ」
「ありがとう、叔母様。叔母様も素敵」
 今日の昼食会をしくんだレディ・メアリは大喜びで二人を出迎え、エリザベスの服を誉めてくれる。

 お返しにエリザベスは、レディ・メアリの菫色の服をほめた。レディ・メアリの目の色とよく合っている。
 庭園に設けられた昼食の席で、エリザベスはミニー・フライの舞台の話を持ち出した。
「まあ、見られるものなら見たいわ」
「チケットの手配ができたらご連絡しますわ。リチャードもつきあってくれるのですって」

 リチャードが席を立った隙に、レディ・メアリは素早くエリザベスにささやいた。
「ほら、気が合うって言ったでしょう?」
「ええ、叔母様。リチャードって本当に素敵な方」
 食後のコーヒーに、小さなケーキを食べながらエリザベスは忙しく頭を回転させていた。
 リチャードとなら、うまくやっていけそうな気がする。彼も同じように思ってくれればいいのだけれど。

「ねえ、リチャード。時間あるなら帰りに中央公園を散歩しましょうよ。叔母様、車を公園まで回してもかまわないかしら?」
「……あなたたちを送らせたら、出かけるつもりだったのだけれど。散歩するなら、車の戻りは遅くなるわね」
「公園まででかまいませんよ。レディ・メアリ」
 リチャードがゆったりとした口調で、口を挟んだ。

「帰りはタクシーを拾いますから」
「中央公園からならたいした距離じゃないし、家まで歩いてもいいわ。家まで帰れば、リチャードを家の車で送らせることもできるもの」
 二人が仲良くするのはレディ・メアリにとっては都合がよかったらしい。帰りに公園の前で下ろしてもらうことで話は決着がついた。
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