レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
いざ、出陣!
数日後、ロイは意気揚々とエリザベスの仕事部屋に入ってきた。パーカーはエリザベスの命令で出かけていて、マギーがタイプライターを叩いている。あれやこれやらねばならぬことは多く、遊んでいる時間はないのだ。
「リズお嬢さん――できると思う。でも、普通にはできないと思うんだ」
「普通には、できないって?」
身を乗り出すエリザベスには渋い顔を見せて、ロイは首を振る。その様子を見れば、自信はないであろうことはエリザベスにも理解できた。
「昔より腕が落ちてる。だから――怪しまれずに相手に接近する手段を考えなくちゃ。リズお嬢さんの友達だろ? 俺が接近するには何か考えないと」
ロイの言葉にエリザベスは考え込んだ。
オルランド公爵に近づくとなれば、確かにそれなりの準備がいる。ロイは下働きだし、公爵とは身分違いだ。普通なら至近距離に近づくことなどできない。
「大丈夫――何とかするから」
そう言いながらエリザベスの視線は、ロイの体を上から下まで往復し、それから顔で止まった。
「お――お嬢さんっ! リズお嬢さん何をっ」
「――いけるんじゃない?」
悲鳴にもかまわず両手でロイの頬を引っ張ったエリザベスは、にやりとした。そのまま彼女の手は傍若無人にロイの身体をぺたぺたと撫でまわす。
タイプライターを叩いていた手を止めたマギーは、ぽかんと口をあけてその光景を見守っていた。
「あなた、女装しなさい」
「――はい――!?」
ロイが大声を上げてしまったとしても責められるべきではないだろう。エリザベスの発言は、あまりにも常識外れだった。
「リズお嬢さん――できると思う。でも、普通にはできないと思うんだ」
「普通には、できないって?」
身を乗り出すエリザベスには渋い顔を見せて、ロイは首を振る。その様子を見れば、自信はないであろうことはエリザベスにも理解できた。
「昔より腕が落ちてる。だから――怪しまれずに相手に接近する手段を考えなくちゃ。リズお嬢さんの友達だろ? 俺が接近するには何か考えないと」
ロイの言葉にエリザベスは考え込んだ。
オルランド公爵に近づくとなれば、確かにそれなりの準備がいる。ロイは下働きだし、公爵とは身分違いだ。普通なら至近距離に近づくことなどできない。
「大丈夫――何とかするから」
そう言いながらエリザベスの視線は、ロイの体を上から下まで往復し、それから顔で止まった。
「お――お嬢さんっ! リズお嬢さん何をっ」
「――いけるんじゃない?」
悲鳴にもかまわず両手でロイの頬を引っ張ったエリザベスは、にやりとした。そのまま彼女の手は傍若無人にロイの身体をぺたぺたと撫でまわす。
タイプライターを叩いていた手を止めたマギーは、ぽかんと口をあけてその光景を見守っていた。
「あなた、女装しなさい」
「――はい――!?」
ロイが大声を上げてしまったとしても責められるべきではないだろう。エリザベスの発言は、あまりにも常識外れだった。