レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 エリザベスはその様子をにやにやと見ていたが、すぐに表情を引き締める。今日のパーティーでは何が何でもオルランド公爵に近づかなくては。

 リチャードの屋敷に車が滑り込むと、先に降りたリチャードはエリザベス、ついでアルマ――変装したロイの名前――に手を貸して車から降ろしてくれた。
「僕は先に行くよ。広間に皆集まってるから、適当に楽しんでくれる?」
「ええ。ありがとう。でも……後でわたしの相手してくれなきゃいやよ?」
 小首を傾げて見上げたエリザベスに、リチャードの頬がわずかに染まる。

「まずは第一関門クリアかしら」
「ばれてなかったですね、リズお嬢さん」
 先に広間に入っていくリチャードを見送り、エリザベスとロイは、顔を見合わせてほっと息を吐き出した。ここまでの間にリチャードに気づかれなかったというのなら、広間に入っても問題ないだろう。
 
「じゃあ、行きましょ」
 エリザベスは先に立って、リチャードの入っていった広間へと足を踏み入れる。
 広間はかなりの広さがあるようなのだが、中は薄暗かった。足下や人の顔が見えないと言うほどではないが、煌々と照らされているというわけでもない。
 たくさんの人が集まっていて、以前テレンス・ヴェイリーの家で開かれたパーティーがそうだったようにあちこちに人の塊ができている。

 広間の隅には軽食や飲み物が用意されているテーブルがあって、見る限りではそこから好きな物を取ってくるようだった。
「とりあえず飲む物を、ね。それからオルランド公爵を探しましょう」
 エリザベスはロイの腕を取って、飲み物のテーブルへと突き進んだ。飲み物の側には、使用人が控えている。
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