レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「オレンジジュースを二つ、いただける?」
首をかしげて、エリザベスは彼に頼む。微笑んだ相手は、手際よく水差しからオレンジジュースを二つのグラスに注ぎ入れて、エリザベスとロイに手渡した。
「よろしければ、チーズとクラッカーはいかがですか?」
「後でいただくわ。お友達に取りに来てもらうつもり」
「楽しんでくださいね」
使用人に礼を言って、二人はその場を離れる。飲み物を手にしていれば、とりあえずは「飲み物はいかがですか」と見知らぬ男性に声をかけられることはないはずだ。
オルランド公爵を探して、エリザベスはきょろきょろしながら広間を横切っていった。彼の顔は知っているのだが――今日はまだ来ていないのだろうか。見当たらない。
きょろきょろしているエリザベスの後ろを、ロイははぐれないようについてくる。
「リズ!」
かけられた声に聞き覚えがあり、エリザベスは振り返った。
「まあ――あなただったの!」
隣にロイがいるのも忘れて満面の笑みになってしまう。細身の黒いスーツがよく似合っているのは、ダスティ・グレンだった。
「あなたがなぜここに?」
以前顔を合わせた時には、貴族階級になじめないようなことを言っていたと思うのに、今の彼はこの場所にいてもとてもなじんでいるように見える。
「学校は出ていないけれど、勉強はしようと思ってて。大学生はいろいろと面白いことを学んでいるからね。リチャードが所属している勉強会に入れてもらっているんだ」
「そうなの。勉強するのは楽しい?」
「新しいことを知るのは楽しいよ」
ダスティの言葉に、エリザベスは口をつぐんだ。
エリザベス自身は仕事にかこつけて、「お勉強」からはすっかり足が遠のいている。新しいことを知るのが楽しいのには同感だけど、勉強はごめんこうむりたいところだ。
そして、ダスティは、エリザベスの後ろに半ば隠れるようにして立っているロイに目をつけたようだった。
首をかしげて、エリザベスは彼に頼む。微笑んだ相手は、手際よく水差しからオレンジジュースを二つのグラスに注ぎ入れて、エリザベスとロイに手渡した。
「よろしければ、チーズとクラッカーはいかがですか?」
「後でいただくわ。お友達に取りに来てもらうつもり」
「楽しんでくださいね」
使用人に礼を言って、二人はその場を離れる。飲み物を手にしていれば、とりあえずは「飲み物はいかがですか」と見知らぬ男性に声をかけられることはないはずだ。
オルランド公爵を探して、エリザベスはきょろきょろしながら広間を横切っていった。彼の顔は知っているのだが――今日はまだ来ていないのだろうか。見当たらない。
きょろきょろしているエリザベスの後ろを、ロイははぐれないようについてくる。
「リズ!」
かけられた声に聞き覚えがあり、エリザベスは振り返った。
「まあ――あなただったの!」
隣にロイがいるのも忘れて満面の笑みになってしまう。細身の黒いスーツがよく似合っているのは、ダスティ・グレンだった。
「あなたがなぜここに?」
以前顔を合わせた時には、貴族階級になじめないようなことを言っていたと思うのに、今の彼はこの場所にいてもとてもなじんでいるように見える。
「学校は出ていないけれど、勉強はしようと思ってて。大学生はいろいろと面白いことを学んでいるからね。リチャードが所属している勉強会に入れてもらっているんだ」
「そうなの。勉強するのは楽しい?」
「新しいことを知るのは楽しいよ」
ダスティの言葉に、エリザベスは口をつぐんだ。
エリザベス自身は仕事にかこつけて、「お勉強」からはすっかり足が遠のいている。新しいことを知るのが楽しいのには同感だけど、勉強はごめんこうむりたいところだ。
そして、ダスティは、エリザベスの後ろに半ば隠れるようにして立っているロイに目をつけたようだった。