レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 そこへ届けられた事故の知らせに、さすがの彼もエリザベスに一言言ってやらなければ気がすまない。
 彼女が何をしようとしていたのか、知っていたのだからなおさらだ。

「いいかげんにしてください。本当に――皆が心配していたのですよ」
 パーカーの言葉にエリザベスは顔をしかめた。心配してくれていたのはわかっている。
「……ごめんなさい」
「それよりお嬢様、お召し替えを」
 パーカーと一緒に駆けつけてきたマギーは、レースの襟がついている明るい黄色のワンピースを持ってきてくれていた。
 真っ白だったパーティードレスはあちこち破れ、泥にまみれている。もう二度着ることはできないだろう。

「病院に行くわ。ダスティが心配なの。怪我はないと思うけど――あと、ロイもね」
 着替え終わったエリザベスは宣言する。
「あなたも治療が必要ですよ、お嬢様」
 パーカーは、エリザベスを助けてくれた家の人たちに礼をのべて、玄関の前に車を回した。トムに留守番をまかせて、パーカー自身でハンドルを握っている。
 車に乗り込んでダスティやロイの運ばれた病院へと向かう間、エリザベスは無言だった。

 窓の外を見ながら、エリザベスは考え込んでいる。ダスティの運転する車は、急にハンドルがきかなくなった。その裏に何かあるのだろうか?
「警察は呼んだの?」
「車を引き上げて調べるそうですよ」
「……そう」
 エリザベスはそれきりまた口を閉じてしまう。パーカーが、そっと胃のあたりを押さえたのにも、彼女は気づくことなく、ひたすらに自分の考えを追っていた。
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