レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「ロイの病室はここ、ダスティの病室はここ、だそうです」
 エリザベスが診察を受けている間に、パーカーは他の二人の病室の場所を確認していた。ロイの方はたいした怪我でもなくぴんぴんとしていたが、問題はダスティの方だった。

 左腕を骨折した上に、頭もひどく打っていて、しばらく入院しなければならないという話だ。
「しばらく、彼の側についているわ。あなたはマギーを一度屋敷に連れて戻って、夕方迎えに来てちょうだい。それから、今回助けてくださったお家の方にお礼をしなければいけないから、それをみつくろって――夕方から仕事に戻るわ」
「……あなたにも休憩が必要なのですがね」
 パーカーは眉間にしわを寄せる。

「おとなしくしていると約束するわ。動き回ったりしないから」
 何度もおとなしくしていると約束し、ようやく解放される。ダスティの病室に入ると、彼のベッドの横には座り心地のよさそうな椅子が用意されていた。
 あちこち包帯を巻かれた彼は、痛々しい姿で、罪悪感が押し寄せてくる。
「……ダスティ」
 意識の戻らないダスティの枕元に付き添って、そっと彼の手を握りしめた。

 ――彼に送ってもらわなければこんなことにはならなかったのに。
 ここに来るまでの間に、エリザベスはダスティの車に細工が施されていたということをきいていた。
 オイルが少しずつ漏れるような細工がされていて、走行しているうちにハンドルがきかなくなったのだという。
 細工自体は簡単なもので、車の知識がある者ならば、数十秒もあれば十分可能だろうという話だった。

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