レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「エリザベス。このまま続けると、君は命の危険に脅かされることになるかもしれない。それでも、まだ、君の探している何かを続けるつもり?」
「……わからないわ」

 彼女のために危険な目に遭ってしまったダスティに嘘をつくことなど考えられなかった。
「何を探していたのか、教えてもらえるかな」
 彼女の家から聖骨を盗み出した者がいること。
 聖骨そのものには興味はないが、できればそれがおさめられていた懐中時計を取り戻したいと思っていること。
 新聞記事から楽園騎士団を洗い出し――アンドレアスを通じてテレンス・ヴェイリーにたどり着いたこと。

 彼から、聖骨をねらうのは楽園騎士団だけではなくキマイラ研究会という組織が関わっていると教わったこと。
 さらには、そのメンバーにはリチャードとオルランド公爵が関わっていると聞いたことまで、彼女の知っている全てを。
「キマイラ研究会を知ってるんだ?」
「……ヴェイリーさんから聞いた話だけは」
 ダスティの問いに、エリザベスはこれまた素直に答えた。
「そうか――少しずつ話を聞いてほしいね」
 ダスティはゆっくりと言葉を続ける。

「キマイラ研究会は、錬金術を研究している。それも知ってる?」
「知っているわ――錬金術なんて、嘘だと思うけれど」
「嘘じゃないよ」
 ダスティは言った。なだめるようにエリザベスの腕を包帯に巻かれた手でなぞり――腫れ上がった顔で微笑む。

「本当に鉛から金を作り出すことができるんだ。いや、鉛だけじゃない。どんな金属からでも金を作り出すことができるんだ」
「そんなことって……そんなこと、本当にできるの?」
 エリザベスは言葉を失った。
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