レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 基本的には、善良なる人間なのだろう――それは、パーカーも同意するところなのではあるが。
 ――あの方は、後先考えず動き回るところがあるから。
 幼い頃は、もう少しおとなしやかだったような記憶もあるが、今の彼女にはそんなところは見受けられない。
 
 早朝、一人で散歩に出るくらいならまだいいのだが、パーカーの目から見れば好ましからざる人間の間にも平気で入っていってしまう。
「……あちらにいた頃は、自分で牛の世話だってしてたんだから」
 彼女の口から、あちらでの生活について語られることはほとんどない。何かの拍子に「人を殺す以外のことはやったと思う」と、ぼそりとつぶやいたことがあった。
 
 あの時はまさか――と、それきりになってしまったけれど、今思えば、それ以上のこともあったのかもしれない。
 ――自分は、あの方を守ることができるのだろうか。
 その疑問は、常に彼に付きまとっていた。
 
 もう少し幼ければ、彼の権限で部屋に閉じ込めることも許されるだろう。いや、レディ・メアリがほうっておかないはずだ。
 さすがに、結婚を考える年齢の女性を部屋に監禁するわけにもいかない。彼にできるのは、エリザベスをできるだけ守ることだけだ。
 
 だが、自分は彼女を守れていると言えるのだろうか。アンドレアス商会に乗り込み、劇場から、さらにはテレンス・ヴェイリーのところにまで、彼女に引きずり回されているだけのような気がしてならない。
 
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