レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 けばけばしい服装の女性達が並んだ看板は、いかがわしいショーを見せる店ということか。いずれの店もまだひっそりとしていた。ここが賑わうのは、夜になってからだ。

「このような場所に、なんの用が? 手伝いはいりますかね」

 トムの問いにエリザベスは黙ったまま、目的の建物を見上げていた。

 周囲の建物と比較すると、明らかに新しい建物だった。ここ数年のうちに建て直されたといった感じの。
 
「いえ、たいした用事じゃないの。車はとめないでいいわ。このまま通り過ぎて」

 キマイラ研究会に所属している以上、リチャードがここに出入しているというのも間違いではないだろう。

 もしそうなら、彼をここから引き離す手を考えなければ。リチャードだけではない。ダスティもだ。

 ——でも、もしうまくいかなかったらどうする?

 もう一度、後ろに寄りかかって考える。答えを見つけ出すまでには時間がかかりそうだった。
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