レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
レディ・メアリの懸念
「まあ、心配していたのよ——リチャードと一緒だから大丈夫だと思っていたのに」
「ごめんなさい、おばさま」
 たいした怪我をしているわけではなく、ぴんぴんとしているエリザベスの様子に、レディ・メアリはほっとしたようだった。

「さあさあ、とにかくお茶を飲みましょう。今日は少し風が冷たいから、居間に火をいれたのよ」
「ありがとう、叔母さま」
 ラティーマ大陸の方が温かいから、エリザベスは寒さにはあまり強くない。そんな彼女のために、レディ・メアリは暖炉の前の席を用意してくれた。
 
 パーカーはこの屋敷の執事とお茶を飲むようにと、控室へと下がらされる。きっと、エリザベスの行いについて、彼もまたお説教されるのだろう。
 この屋敷の執事は、パーカーの父親と同世代であり、昔からの地人なのだ。
 給仕のために呼ばれたレディ・メアリのメイドが、ティーカップに紅茶を注いでくれる。
 薫り高い紅茶のカップを手に取り、エリザベスはほっと息をついた。カップに手も付けず、レディ・メアリはじろりとエリザベスをにらみつける。
< 184 / 251 >

この作品をシェア

pagetop