レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
再始動
 その日以来、エリザベスは変わった。
 エリザベスの様子が変わったことは、すぐにパーカーに気づかれたけれど——。
 今日も、仕事部屋にはタイプライターをせわしなく叩く音が響き渡っていた。

「……ダスティのところ? 行かないわ。忙しいんだもの——そうね、お見舞いは送ってもらおうかしら。パーカー、あなた届けてくれる?」
「よろしいのですか?」
 エリザベスにそう言われて、むしろパーカーの方がどまどったようだった。彼としては、エリザベスがよけいなことに口をつっこまないのはありがたいのだろう。

「……ええ。彼に会っているような時間はないの」
 パーカーの方には見向きもせずに、エリザベスは書類に目を通していた。やらなければならないことは、いくらでもあるのだ。
「それから、今日の午後は予定を変更するわ。シルヴィアにお茶に呼ばれているの」
 こうした女性同士の集まりにエリザベスが顔を出すことは多くなかった。今までとはまるで違う。
 
「それからアンドレアスと面会の予定を取ってちょうだい。できれば、明日。無理なら三日以内に」
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