レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「なかなか繁盛しているみたいじゃないの?」
「いえ、とんでもございませんよ」
アンドレアスの額を汗がつたう。
彼の女性秘書が、近くの店から配達させたというサラダ、肉料理、パンにチーズ、という昼食をテーブルの上に並べていった
あいかわらず化粧が濃いのだが、その点については追求しないでおく。
「さあさあ、お席にどうぞ。お嬢様のお好きなものを、ご用意いたしましたから」
「子羊のローストね。好きよ」
きっと、昨日のうちにパーカーにでもたずねたのだろう。おいしいものを食べるのは、好きだ。
席に着いたエリザベスは、遠慮なく、テーブルに着くとナイフとフォークを手に取った。
「それで、お嬢様。今日のご用件は……?」
「家の者達に、テレンス・ヴェイリーと接触することを禁じられたの。本当はあなたとも関わってほしくないみたいだけど」
「ご冗談でしょう」
アンドレアスは目を丸くしてみせる。そうすると妙に愛嬌がある表情に変わるから不思議なものだ。