レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難

「正解よ。新しく建て直した建物なの。何故、その建物だけ建て直したのかしら? 他は正直とても古い建物だったわ」
「それを調べろと?」
「もう一つ」
 エリザベスは指を立てて見せた。

「オルランド公爵——私は世間一般に流れている情報しか知らないの。彼の裏を探ってちょうだい。お願いできる?」
「嫌と申し上げることはできませんな。お嬢様のおかげで、薄皮一枚でつながっている首ですからな」
 大仰なしぐさでアンドレアスはエリザベスの頼みを受け入れた。
「さて、では取引成立といたしましょう。お嬢様、こちらのチーズはいかがですか? 取引のある別の商会の取り扱い品でして——お嬢様が日頃召し上がっているお品ほどではないと思いますが、なかなかの品だと思いますよ」

 そこからあとは和やかに食事は進んだ。パーカーには、絹布の仕入れについて相談をしていたということで話をしたと口裏を合わせることも決めておく。
 食後にイチゴのタルトとコーヒーまで出してもらい、エリザベスは大満足でアンドレアス商会を後にしたのだった。
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