レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 
 だが、そんな中でダスティの車に乗っていて事故にあったなんてことが知られたら、どんな噂になるか。

「マギー、お嬢様の服とロイの服を用意しなさい。すぐに病院に行くから。私はその前にやらなければならないことがある」

 まずは各新聞に口止めをしなければ。それから、やはりあの俳優とは縁を切らせなければ——。
 
 そこに、どんな想いがあるのかを、見てみないふりをする程度には、彼は自分の立場をわきまえている。
 幼い頃、全力で守ると誓った少女。あの頃は、彼の力が足りなくて、手を離さざるを得なかったけれど。

 少なくとも、今は、もう少し違った形で彼女を守ることができる。新聞各紙に手を回し、事故の件については、口止めをすることに成功した。
 とんでもないところに転がり落ちたダスティの車についても、マクマリー家から支払いをして引き上げることに決定する。
 
 本来であれば、ダスティの身内のものが手配するべきところなのだろうが、それを待っているわけにはいかなかった。
 他に連絡先も知らなかったし、彼の後見人のような立場であるミニー・フライの方には連絡を入れた。
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