レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 ◇◇◇

 こうなったら、自分で乗り込むしかない。
 エリザベスはそう決めた。
 今度はロイは巻き込まない。
 ダスティはまだしばらく入院中。退院したらミニー・フライの家——つまりは、テレンス・ヴェイリーの家——でのんびりするのだそうだ。

「六月二十一日 十五時 レクタフォード十五番地」

 エリザベスは、書きうつしたメモを声に出して読んでみた。まずは、パーカーを巻く方法を考え出さなければ。

 マギーに電話をかけさせて、リチャードを呼び出す。

「六月二十一日は暇かしら?」

 エリザベスは陽気な声で話し始めた。

「ごめん、その日は先約が……」

 リチャードが眉を寄せているのが見えるようだった。

「そうなの。残念だわ。先日パーティにお邪魔した時、すぐに帰らなければならなかったでしょう? だからあなたの論文のことも何も聞けなかったんだもの。あの時のこと、お詫びしたかったの。雑誌、送ってくださる?」

「もちろん。君が興味あるのなら」
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